引き上げ品等、放り込み倉庫
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世界の双子。ゆるめ(頭のネジが的な意味で)。
「そうか! 女神も同意見だったとはな!」
「そうですとも、けれど、決して私に限ったことではございませんのよ」
得心顔で頷く愛の女神に頷き返すのは、紳士然とした時を司る守護獣、黒猫ダン・ダイラム。
「そうなのかね。何とまあ、驚いたことか。
あの狼の弟君が、それほどに我が敬愛するゼファー殿を……」
「ええ、それはそれは著しく、正しく許しがたい行為ですわ」
「おお、あの我が尊き竜王、ゼファー殿を!
独り占めとは羨ましくも許しがたき行為!」
「分かって頂けまして、ダン・ダイラム!
ルシエド様の罪深さが!」
「おお女神よ!
貴女の言葉でこのダン・ダイラム、決意致しましたぞ!
ルシエド殿に、我ら守護獣の怒りと恨みの鉄槌を!」
「まあ、良くぞ申しましたわ、ダン・ダイラム!
私もそっくり同じ意見ですのよ」
「では女神、ひとまず、我らは休戦と言うことで……」
「ええ、ともに強敵、ルシエド様からゼファー様を取り戻すのです」
「時にルシエド様。あたくし、奇怪な噂を耳に致しましたの。
愛の女神と、黒猫が最近何やら仲がお良ろしい、とか何とか」
いつもの風景と違うのは、愛の女神がいるべき場所に、珍しく海竜王がいるだけで、今日もゼファーはルシエドの膝の上に腹を乗せてのっぺりと長くなっていた。
「何だルカーディア、お前もか。ならば真なのかも知れんな。
先だって、二体で顔を突き合わせている所に出くわした場面、
何かの見間違いだろうと放っておいたのだが、なるほど、密会の現場だったわけだ」
「まあ、あのお二方、ゼファー様を巡っての確執は根深いかと思っておりましたのに……」
「うむ。まさに神秘だな」
天地が崩壊しても相反し続けるだろう二体と言われているだけに、にわかには信じられない話だが、ルシエドは口元を歪めて笑う。
「お前も、あんまり邪魔するなよ」
「うん? 邪魔? 何をかな?」
膝の上の小さなゼファーは、重そうに頭を持ち上げて微睡んだ瞳の濁りを深めた。
「ラフティーナとダン・ダイラムは、出来る限り二人きりにしといてやれ。
それが親切ってもんだ」
短く鼻を鳴らすと、ゼファーはしばらく考えた後で、うん、と一つ頷いて、後は項垂れた。
後々、二体の恨みを、なぜかより深く買ってしまうルシエドだった……
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