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引き上げ品等、放り込み倉庫
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千の花束よりも、一輪の優しい花を。


 







手を伸ばして、届かないものがあるのなら、手に入らなければいい。
誰もが手に入らないものならば、願うこともない。望むことすらない。
何が触れなければいいのか、もう分からないから。


「二者択一だ。選べ。
 俺とファルガイア、どちらを取る?」

いつものからかいとは確実に違う問いの強さに、ゼファーはゆっくりと振り返った。
その白い面から、感情の片鱗さえも読み取ることはできないが、ルシエドの思惑通り、彼はいささか戸惑っているように思える。柳眉がささやかながら不満を訴える時のように顰められていて、それに薄暗い満足感を覚えた。
ゼファーはしばらく言葉を発さなかった。
それは、問いに対する答を出しあぐねていると言うよりは、ルシエドの真意を量りかねているように見えた。
やがて、ルシエドの沈黙を遮るように、ゼファーは静かに口を開く。

「……百の中からでも千の中からでも。
 私はファルガイアを選び取るよ」

声に躊躇いは感じられなかった。
迷いもない声の強さに、絶望するのか感激するのか分からない。
どちらも正しいようでいて、そのどちらも違うような気がするからだ。

だが、それが果たして弟の望む言葉でなくとも、ゼファーの真実は正しくそれだった。


つまり。ファルガイア。

それだけが真実。


なぜならば、守護獣である以上、ルシエドもまたファルガイアに、生きる存在だからだ。


法則がそうあるならば、ゼファーは永遠にファルガイアを取り続ける。
それこそ、百の中からでも千の中からでも。

千よりも百よりも。

ファルガイアを。
全てが等しく生きる大地を選び続ける。

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