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【女性向け】 アイシールド21・ヒルセナ。
100のお題やってた時のもの。暇だった入院生活の時に書いた懐かしい思い出……








―――とん、と。
存外軽いちからで壁に押し付けられた事に、セナは戸惑った。


放課後の部活の後、いつも一緒に帰っている仲間達は今日に限って何かの用事で先に帰ってしまい、今日も特に用事のないセナだけが取り残されていた。

 いや。
今日も特に用事のないセナ、と、部室の鍵を預かるヒル魔、だけが。

カジノ部屋もとい、ミーティングルームでノートパソンコンを組んだ足の上に置いたヒル魔はいつも通り、黙々と打ち込み作業をしていた。
その隣を通り過ぎる一歩手前で足を止めたセナは、「お疲れ様でした」と、こちらを一瞥もしない相手に会釈するが、当然、見向きもしなければ手も止めないヒル魔は、「おー」と適当に相槌を打つだけだった。
だが、いつものことなので、今更気に病むこともなく、それを聞いたセナが部室のドアノブに手をかけたその時。

「糞チビ」
「へ?」

思わずノブから手を離し、ヒル魔を振り返る。

彼は膝のノートパソコンを閉じてテーブルの上に置き、あの細く長い指先で一度だけ、こちらに来いと指示を出す。
試合中のあの、「ハドル」の掛け声のように。

「はい」

無言の合図にも律儀に答える間に、ヒル魔が椅子から立ち上がったので、セナは慌てた小走りでヒル魔の元へ急ぐ。
しかし、ヒル魔もまた一歩を踏み出したので、そう広くない部室の中、セナとヒル魔の距離はそうして詰まる。

「何ですか?」

身長差は21cm。
頭一つ分は高いヒル魔を、30cmの近さで見上げるのは、正直辛かった。

ヒル魔は無言で、緊張した面持ちで見上げて来るセナの右腕を掴むと、誘導するような柔らかいちからで壁際に連れて行く。


――― とん、と。
存外軽いちからで壁に押し付けられた事に、セナは戸惑った。



「………あ、あの……?」

どう考えてもヒル魔らしからぬ行動が、ひどく不安に感じられた。
姿が見えない時に何をやっているのか知らないし、知りたくもないが、ヒル魔の悪魔的行動は少なくとも人間を選んでいるし、自分を初めとした仲間全員を傷つける事は絶対にないと言える。言える、が、しかし何だろう。この揺らぎ始める感情は。漣のように低く遠く響く焦燥感は。

セナは、言い知れぬ不安と困惑を紛らわすように、肩に下げたバッグの紐をぐっと握り締めた。

「……あの……ヒル魔さ――」

呼びかける声を遮って、ヒル魔がその少年の左耳を掠める距離の壁に手をつけると、瞬間、セナの呼吸が途切れた。
その反応に内心笑みを漏らした悪魔は、上体を屈ませると、セナの鼻先が触れるほど近くまで顔を近づける。


驚きに目を見開き、反射的に逃げようと壁に背を貼りつけるセナは、ヒル魔と目が合った瞬間から、どうしても視線を外すことができないでいた。しかし、ゴツリと無骨な音と同時に、堅く冷たいものが右のこめかみに押し当てられた瞬間、はっと息を呑んだ。

覚えのある感覚に、先ほどとは違う緊張感が沸き起こる。


「目ェ、閉じろ」

脳を直接揺さぶられるような声に、セナの全身に震えが走った。けれどもう、セナの視線はヒル魔のそれに捕まってしまって、逸らすことはできない。
じっと固まっていると、ヒル魔が焦れたように銃口を押し付けてくる。
頭を押されてほんの少し、ヒル魔の瞳から逃れられたセナは、前髪だけを弱弱しく震わせて、掠れた声でようよう呟いた。

「………だ、……だめ……」
「なんでだ?」

にやりと、口の端が吊り上って垣間見えた鋭い牙のような犬歯に、セナは途端に言い知れぬ恐怖に襲われる。


あの歯で、バラバラに噛み砕かれるようで。
それこそ、身も心も、何もかも。


「壊れちゃう……」


ヒル魔は、やっとの思いで紡ぎだしたセナの呟きを鼻で笑い飛ばすのだが、それを心外だと感じる前に、ゴトン、と重い音がした、ような気がした。
セナの考えるちからは低下しているうえ、ヒル魔の拘束も重なってか、それを確かめようと言う気も起こらない。


「バーカ」

ヒル魔の罵りが耳に絡みつく。
だが、不思議と嫌な感じはしない。
それどころかむしろ、この甘味の全てを呪うこの男の言葉の甘ったるさに、セナの思考は完全に蕩かせられてしまった。

つい先ほどまで感じていた恐怖は全て溶け、ヒル魔の細く長い人差し指が喉仏に触れた時も、それは魅惑的に笑う整った顔立ちに釘付けになっているだけだった。
そのまま指の甲で、顎、唇、鼻、額を身震いするほどゆっくりと撫で上げた後、開いた掌の人差し指と薬指がセナの瞼を下ろした時も、抵抗は見る影もなく。

「壊しゃしねーよ」

囁かれたのは、唇が触れる前か後か。

ほんの一瞬間だけ、セナの身体が小さく跳ねた。
が、強く押し付けられたヒル魔の唇と身体が逃げる事を許さず、そのまま壁に押し付けるように抱き潰される。

二人の胸の間のセナのバッグは、足元に落ちた後でヒル魔に蹴り飛ばされ、縋るものを探すセナの指はヒル魔のシャツの裾を握り締める。

決して浮かせずに、唇のみで小さな、柔らかい唇をゆっくりと揉むようにして、何度も何度も食むと、やがて息苦しさに耐え兼ねて開かれたセナの小さな咥内に、ヒル魔は悠々と舌を差し込む。驚いたセナが口を閉じる前に、無防備な舌を易々と捕まえて引っ張り出す。
セナの小さなそれを、とろけるように柔らかくなるまでヒル魔の長い舌が、巻き込むように何度も何度も愛撫を繰り返す内、セナ自身ももうヒル魔のシャツの裾を掴む力を失い、壁にもたれたままズルズルと崩れ落ち始める。

崩れるセナの腰と、肩に回した腕でヒル魔はそれを支え、セナの呑み込み切れなかった唾液を吸い上げて呑み込んでやる。
もうだらしなく開きっぱなしになったセナの呼吸を助けるため、時折唇を浮かせたり、角度を変えて舌を味わい、歯列を味わい、歯茎や頬肉まで、ヒル魔は余すところなくセナの咥内を味わい尽くした。


そして、ぐったりと力を失い、ヒル魔の腕の中で朦朧とした黒目を揺らすセナの耳元に、



「堕とすだけだ」


   悪魔が呪いの言葉を吐いた。

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