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引き上げ品等、放り込み倉庫
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MOTHER。二人旅は小さな発見の連続。










スイートリトル工場に行く道は比較的開けている。車でも行けるくらいの大きな道は、僕が生まれる前から整備されていたそうだ。 僕らはそこを歩いている。
閉鎖された工場に用があるなんて、犯罪者か恐いもの知らずくらいだ。勿論、僕らはそのどちらでもない……はずだ。何でそんなスイートリトル工場に僕は行くのかって? それは……

「……ロイド」
「うん?」

前を歩いているケンの足が止まる。前方を向いたままのケンはそれきり黙ってしまう。

……まずい、もしかして、さっきの考えが読まれちゃってたとか?

「……ケン?」

ケンは僕の質問には答えなかった。
代わりにこっちを振り返ると、ずっと前の方のこんもりした木の塊を指さして早口で言う。
「あそこで雨宿りするぞ」
「雨宿り?」

僕は空を見上げる。
真っ青の雲一つない青空が広がってるばかりだ。
雨なんて……

「鳥が言ってる。雨雲から逃げてきたって。
 すぐに追いつかれるから早くしろって」


ケンはいわゆる超能力者だ。本人はそう呼ばれることはあまり好きじゃないみたいだけど(サイキッカーとかエスパーとか呼ばれるのも嫌みたいだ)、不思議なちからを持っている。
テレパシーやヒーリング、弱い僕を手助けしてくれるシールドとか。科学で説明できない特別なちからを、ケンは当たり前のように操る。
ケンにとっては本当に普通のことなんだろうか。動物と会話できたり、近い未来のビジョンを視たりなんて。
でも、視えないし聞こえない僕にとっては、時たまこうやって足を止めるケンにはまだ慣れない。


「うわ、本当に降ってきた……」

木立の屋根の下に隠れた僕らを待っていたように黒くて思い雲が現れると、あっと言う間に空を覆い尽くして雨を降らせ始めた。

「通り雨だから、もう少し待ってるってさ」
「それも鳥が言ってるの……?」

隣で木に凭れて伸びをしてたケンは、あくびをする途中で邪魔されて変な顔になってる。

「んや、ウサギ」
「ケンってさ、
 どんな動物の言葉でも分かるの?」

ケンはあの赤い帽子を手元でいじりながら、少し考えるように口をへの字に曲げる。

「頭ヘンにされてなきゃな」
「ああ、シュークリーム動物園?」

「あーでも、フラミンゴとかラクダってダメだったな。
 考えてることは分かるんだけど、内容がめちゃくちゃで全然分かんなかったわ。
 まるでロイドの頭の中みたい」
「へー……」


……………ん?


「ちょっとねえ、それどう言うこ……」
「あ。雷」
「ちょっと! 誤魔化さないでよ!」 

その時、遠くで雷が鳴り響いた。


ケンは超能力者だ。不思議なちからを持っていて、テレパシーやヒーリング、弱い僕を手助けしてくれるシールドとか。科学で説明できない特別なちからを当たり前のように操る。

でも、視えないし聞こえない僕にとっては、彼がどんな世界を視ているのか分からない。

もし、僕が彼と同じようなちからを得たとしたら、今のこの風景とは違ったものが視えるのかな?

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