引き上げ品等、放り込み倉庫
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《微妙に女性向け》 FF4・幼馴染組。
暗黒騎士になることに一番反対したのはローザだった。
何度も何度も繰り返し説き伏せようとする彼女に、決めたんだよと話を終わらせる度、彼女は泣きそうな顔で(実際、泣かれたことも少なくない)考え直してと懇願された。 僕は笑って誤魔化そうとしたんだけれども、それからしばらくしてから、新設される白魔導士隊への入隊のことを知らされた僕の説得に対して、ローザは微笑みながら「もう決めたの」と、今まで散々僕が言い続けてきた言葉で返した。
「それは僕に対する仕返しなのかい?」
ローザの顔が、見る間に表情を失っていった。
「あなたは」彼女の声ははっきりと分かるほどに震えていて、顔には何の感情も見えないのに、今にも泣き出しそうだった。
「あなたは酷いわ、セシル。
誰にも何も言わせようとしないで。
もう決めた、だなんて言葉で私達を遠ざけようとしている」
ねえでもローザ。だって仕方がなかったんだ。
君が僕を引きとめようとする度に、君の言葉を聞こうとすればするほど、僕の決心は揺らぎそうになっていたんだ。暗黒騎士になることが一体どう言うことなのか、僕は良く知っている。だから、時折不安を感じて君の言葉を信じてしまいそうになる。
けれどそうなってしまったら、君の説得を聞き入れてしまったら、僕は絶対に後悔するだろう。
「だから、私も諦めました。
その代わり、決めました。
あなたの傷を癒すために、私は白魔道士になる。
もう決めました。だから、あなたにも何も言わせません」
まるで彼女はあの時の僕の鏡のように、笑ってそう言った。
僕はその時初めて、今までの自分の態度が彼女を酷く傷つけてしまっていたことに気付いた。だけど、ローザ、僕は君にそんなことをして欲しいわけじゃないんだよ。
彼女に何も言えなくなった僕を、カインは黙って見ていた。
カインは、最初から何も言わなかった。
半狂乱のローザから僕の決心を聞いて、自分で確かめに来たと、珍しく動揺した様子で訪ねてきた時、僕はうっかり笑ってしまった。おかしなことを言うね、と。
だって前から僕はそう思っていたから、もしかしたら言うのを忘れていたのかも知れないけれど、ひところはずっと一緒にいたカインは知っているものと思っていたから。
「……そうか」
彼は、いつも通り冷静に、ただ淡々と話を結んだ。そして、何も言わなくなった。
そう、何も。
顔をあわせても、以前のように話しかけてくることも無くなった。ひとのいるところで鉢合わせをしても、当たり障りのない言葉を交わすだけで、決して一対一では会話をすることがなくなった。やんわりと避けられている節を感じ始めた頃には、思い当たる原因が一つしかないことに気付かざるを得なかった。
そして僕は、カインに嫌われてしまったんだろうと思い込んでいた。
カインは何も言わなかった。ただ、怒っていた。
長い間、一緒にいたから彼は僕の気持ちをわかってくれると思っていた。
彼に決心を告げた時も、僕はローザと同じことを言われると覚悟していた。でも、カインは何も言わずに分かったと頷いた。その時の僕は、それを、彼が理解してくれたのだとと勘違いしていた。
けれど僕は、彼を酷く見くびっていた。
だって彼が理解してくれていたのは、僕の決心ではなくて、僕の気持ちだったから。
そう、十数年間の友情も、僕は見くびっていた。
交友が復活したのは、僕が暗黒騎士団に入団したころだった。学生時代のような関わりが増えるとともに、当時の冗談や揶揄が、労わりと慰めに変化していた。
普段は遠巻きに見守ってくれているカインは、辛い時は傍について支えてくれた。
そして僕は、彼が僕の決心を認めてくれたわけではなかったことに気付いた。カインは僕の一番の理解者で、僕の気持ちを優先してくれた。もしかしたら、彼自身の感情よりも。
僕は、自分の決心を正しいものだと錯覚したいがために、ローザの言葉を聞かなかった。カインの気持ちを考えなかった。二人を、一番酷いやり方で傷つけた。
僕は、どうしたら良いんだろう。
あの優しい二人の幼馴染に、一体、何を返せるんだろう……
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