引き上げ品等、放り込み倉庫
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《女性向け》散文。
すきだと言って泣いた子どもに手を差し伸べたことがある。
後になって、変に期待を持たせる残酷さに過去の自分を恨んだけれど、どうしても背中を向けることができなかったのも確かだった。
やめろやめろと頭の中で繰り返しながら、子どもに構わずにはいられない。
利口ではないが愚か者でもない子どもは、敬愛と畏敬で自分に対する恋心を普段は丁寧に折り畳んでいる。けれど時折、厳重に隠された恋慕が不意にあふれ出た時、彼は子どもの命すら支配してしまったような錯覚に捕らわれる。それは彼を酷く興奮させ、また不安にもさせた。
そうして子どものもたらす喜びの多くを感じだした頃、彼はやっとあの恐れの意味を理解した。
すきだと言って泣いた子どもがいる。
手を差し伸べたことを後悔しなかったと言えば嘘になる。けれどあの時は想像もしなかったこの感情は、今は穏やかに彼の中で成長している。
いつか、そう遠くない将来に、あの時必死に訴えてかけてきた子どもに答えてやることができるだろう。
今はもう後悔はしていない。
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